日本の福祉(伊藤昌亮)

そもそも日本は、社会保障費の対GDP(国内総生産)比が2019年の時点で北欧諸国はもとより米国やドイツも下回るなど、福祉の規模が小さい国です。そして国に代わって疑似的な福祉を支えたのが企業と家庭です。企業の年功序列での終身雇用と手厚い福利厚生が働き手を支え、専業主婦の存在を前提にした家庭が育児と介護を担いました。1990年代までの弱者の多くはこの企業福祉、家庭福祉の枠に入らなかった人でした。